← メールマガジンもお読みいただけます。

縮小拡大

[ 掲示板のマナーについて ] [ 記事検索 ] [ 記事修正・削除 ] [ 携帯電話用URL ] [ 過去の記事 ]

はじめての方のメッセージも大歓迎です!
コンサートの感想や小山さんへの応援メッセージなどをお寄せください。
ピアノの好きのあなたに50の質問は=>こちらです!
小山実稚恵さんのピアノで聴きたい曲は?=>こちらです!

お名前 ※ハンドル名(ネット上の仮名)で構いません。
メール ※未記入で も構いません。
U R L ※未記入でも構い ません。(ブログの U R Lも可能です)
Icon Icon
タイトル
メッセージ
A,FONT,Bタグのみ使用できます
文字色
投稿キー 投稿キー を右の欄に入力してから”書き込みボタン”を押して下さい
パスワード
※パスワードを設定しておくと削除、編集が出来ます。


[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [24] [25] [26] [27] [28] [29] [30] [31] [32][33] [34] [35] [36] [37] [38] [39] [40] [41] [42] [43] [44] [45] [46] [47] [48] [49] [50] [51] [52] [53] [54] [55] [56] [57] [58] [59] [60] [61] [62] [63] [64] [65] [66] [67] [68] [69] [70] [71] [72] [73] [74] [75] [76] [77] [78] [79] [80] [81] [82] [83] [84] [85] [86] [87] [88] [89] [90] [91] [92] [93] [94] [95] [96] [97] [98] [99] [100]


皆様からのご報告に感謝・感動します。
covariant
東日本大震災3.11から5周年となる今月に入って以降、小山さんの活発な演奏活動に対する皆様からのコンサート報告を拝見するにつけ、このファンサイトを訪ねる私などの気持ちもずっと興奮状態を持続しております。
3月に入って、yukiya.s 様をはじめとして、とさま様、ぴあのふぉるて様、まじょるか魔女様からの詳らかなご報告と、このような素晴らしいサイトを運営していただいている管理人まさと様に、改めて感謝を申し上げずにおれません。

3月20日 東京芸術劇場 2016都民芸術フェスティバル の小山さんは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番だったのですね。現状では第5番より第4番が好きな私としては、何とうっかりしていました!

私は、2008年初めにピアニスト小菅優さんが、敬愛するピアニストとしてクラウディオ・アラウさんを挙げられたので、ハイティンク指揮、ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団との「ベートーヴェン・ピアノ協奏曲第3番・第4番」の中古CDを入手しました。
私にとってストレス解消や、落ち込んだ時の癒しに最も効果的な処方は、クラシック音楽の鑑賞です。そのような時に、まじょるか魔女さんのおっしゃった「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番の第2楽章にとても惹かれます。」(No.4520)に、私も So do I ! 、「静かな第2楽章フリーク」な私の中では、この第2楽章を含むこの協奏曲第4番ほど効き目のある音楽はありません。これまでクラウディオ・アラウさんのCD演奏に親しんできただけに、小山さんの演奏を聴きたかった。スケジュール表を検索しましたが、少なくとも年内にはこの曲の演奏は無いようですね。まあ、小山さんはこれから先、ベートーヴェンを弾かれる機会が増えるはずですから、その機会をお待ちします。

「Re:『田村宏メモリアルコンサート』のご報告」で、とさま様からご紹介いただいた朝日新聞夕刊記事の、小山さんのお言葉:(No.4523)
 【(田村先生は)ピアニストを孤独にしてはならないと思っていらしたのでは。人と積極的に関わり、ともに音楽をつくる喜びをこそ成熟の糧に。そう、先生に改めて語りかけられている気がします。】
単なる演奏家としてだけではない、小山さんのご活動にはほんとうに尊崇の念を禁じえません。
そして、これまたとさま様の言葉をお借りすれば、
 私達が小山さんの演奏に感動するのは、まさに小山さんの「全てが音楽」という尊い姿勢にあるのでしょう。(No.4518)
という、音楽家小山実稚恵さんのすばらしいピアニズム。
これらに私も、深く共感いたします。今月に入って皆様のご報告を拝読し、私も自らの思いを述べさせて頂きました。
Date: 2016/03/25/01:16:43 No.4524

Re:皆様からのご報告に感謝・感動します。
とさま
covariant様

温かいお言葉に心が潤っています。様々な共感に充ちたこのサイト・・・小山さんのファンの皆様のそれぞれの想いが、それぞれの言葉で飛翔するこのサイト 皆様への感謝はもちろんですが、covariantさん仰られるように、まさとさんへの感謝の念が募ります。

covariantさんはベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番がお好きなんですね。「静かな第2楽章フリーク」なcovariantさんであれば、もうご存知かとは思いますが、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番ハ短調作品37の第2楽章も本当に素晴らしい音楽ですよね。絶美の音楽と言っても過言ではないですね。静謐な音楽が、やがて感動的に高揚していくパッセージなど、ベートーヴェンならではの作風です。小山さんは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を演奏されたことがないかもしれませんが(少なくとも5番や4番のように頻繁に)、この第2楽章は小山さんのピアノで聴かせていただける機会があれば、それは最高の音楽に変容することでしょう。

もちろん、第4協奏曲の第2楽章、第5協奏曲の第2楽章も本当に素晴らしい魂の音楽ですよね。covariantさんがいつの日にか、小山さんのピアノでこれらの作品をお聴きになれるとよいですね。

〜〜〜〜〜
【単なる演奏家としてだけではない、小山さんのご活動にはほんとうに尊崇の念を禁じえません。】(covariantさん)・・・本当に仰る通りです。小山さんはピアニストとして、音楽家として、芸術家として、卓越した方でありながら、それ以前に人として様々な尊い活動をなさっていますね。それが音楽に色濃く反映していますね。

〜〜〜〜〜〜
卒業式の季節ですね。仙台は朝、雪が降りました。きょうは、あの震災の翌年に大学に入学した学生が巣立っていく日でもありました。時が経過したことを感じさせますが、小山さんは、昨夏に続き、今年の夏に「こどもの夢ひろば“ボレロ”」@仙台を企画して下さっているとのことです。小山さんの尊い活動は続きます。covariantさんのお言葉通り、私も、小山さんを心から尊崇しています。

とさま

Date: 2016/03/26/00:13:05 No.4525

Re:皆様からのご報告に感謝・感動します。
covariant
とさま様

温かい Reply をいただき、ありがとうございます。
私所有のクラウディオ・アラウ版ベートーヴェン・ピアノ協奏曲CDは、第3番・第4番の2曲セットですので、
第3番もよく聴いて、もう結構馴染んでおります(笑)。最初に目頭を熱くした第2楽章は恐らく第4番の方だったのです。
しかしこの辺になると、それこそ私のような音楽知識の乏しい者にとっては特に、最初に誰の演奏によってその曲を聴いたかによって、曲への第一印象が決まってしまうのではないかと思います。

震災から5年と言う歳月は永いのですね。とさまさんの「きょうは、あの震災の翌年に大学に入学した学生が巣立っていく日でもありました。」というお言葉に、時の大切さを改めて実感しました。

近い将来、とさまさんや皆様と、小山さんのバッハやベートーベンを共に聴く機会が訪れてくることを切望いたします。
Date: 2016/03/27/18:30:19 No.4527


▲Top

小山さんのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番に聴き惚れました。
ぴあのふぉるて
(とさまさんのご投稿に「蓋」することになって…すみません)

昨日午後2時より、「2016都民芸術フェスティバル参加公演 オーケストラ・シリーズNo.47」が東京芸術劇場で開かれ、
下野竜也さん・読売日本交響楽団さんと小山実稚恵さんの共演を嬉しく拝聴しました。
小山さんのドレスは情熱的な緋色です。

小山さんのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番は素晴らしかった!
独奏ピアノから始まるのが嬉しい、流麗で、厳格な雰囲気の作品。大好きです。
ピアノとオーケストラとの掛け合いが素敵ですね。小山さんと皆様で一緒に歩んでいく一体感にわくわくします。第2楽章は弦楽器とピアノの対話が心に沁みます。
そして、何といっても、曲全体を通してピアノの音色が多彩で美しいことといったら! 滑らかな音階、愛らしいトリル、心を打つ左手のメロディ、決然とした和音…いろいろ全部、ピアノという楽器の魅力満載ですね。聴き惚れました。
想いをこめてカデンツァを演奏なさる小山さんを、団員の皆さん全員が身じろぎひとつせずに見入る様子にも、いたく感激しました。

小山さんの演奏で左手が歌うとき、いつもハッと息を飲みます。想いのこもった低音の美しいメロディに心を打たれます。
(小山さんの左手の素晴らしさは、以前、土の器さんも記述されていたように思います)
「左手」といえば、こんなことを思い出しました。
昨年12月のマスタークラスで、生徒さん(12/16、ベートーヴェン「皇帝」のレッスンを受けた男性)の演奏にアドバイスされる際、小山さんはいろいろな箇所で、その大切さを伝えようとなさっていたのです。
「右手は意思があるけど、左手にも意思が感じられるといい…」
「左手、(〜の音に)もう少し ”命” があるといい…」
「右トリルもいいですけど、左手を綺麗に…」と。
小山さんの左手の表現の魅力は、このように左手に込められた深い想いがあるからこそ、と感じ入りました。

さて、小山さんアンコールに「エリーゼのために」を弾いてくださいました。前半、後半、どちらもベートーヴェン作品なので、もしアンコール曲を演奏してくださる時は、やはりベートーヴェンの…「エリーゼのために」かなぁ…という気がしていたので、すごく満たされた気持ちになりました。
(小山さんの生演奏初めて、と思われる)隣の女性お二人連れが、第4番が終わったあと、「すっごい!」と驚き、
アンコールの後も、「『エリーゼ』ってこういう曲なんだ。ゼンゼン違うね!」と興奮気味に感動を語り合っていました。私もまったく同感です。

後半の交響曲第5番「運命」もたいへん素晴らしかったと思います。
この曲を、本日午後、小山さんを初め田村先生の門下生の皆様が演奏なさるので、前日に元の作品を聴くことができたことは幸運でした。
オケのアンコール曲がピアノ作品(ピアノ・ソナタ「悲愴」の編曲)だったことも粋な選曲だと思いました。ピアノでオーケストラ作品を弾いたり、その逆があったりと、音楽は楽しいですね。

昨日20日の演奏会と今日21日のメモリアルコンサートは、まるでペア公演のようですね。サイン会でそのことを小山さんにお伝えしたら、「そうそう、偶然、そうなんです」と嬉しそうにおっしゃいました。
小山さん、下野さん、読売日本交響楽団の皆様、ベートーヴェン尽くしの素晴らしい演奏会をどうもありがとうございました。
ファン仲間の皆様、今日午後、上野で、またご一緒できるのを楽しみにしております。
Date: 2016/03/21/11:09:31 No.4519

Re:小山さんのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番に聴き惚れました。
まじょるか魔女
とさまさん、ぴあのふぉるてさん、お二人続けての東京芸術劇場からのライヴ中継のような
迫力満載の濃いレポートに、心が東京へワープする思いです。
「全ての音符に魂を込められる小山さん」
「ピアノという楽器の魅力満載ですね。聴き惚れました。」
「小山さんへ:第4協奏曲の最高の演奏・・・
 これを越える演奏は小山さんにしていただくしかないです。」
「小山さんの演奏で左手が歌うとき、いつもハッと息を飲みます。
 想いのこもった低音の美しいメロディに心を打たれます。」
次々に湧き上がる 小山さん賛歌に、小山さんの音色を想像しています。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番の第2楽章にとても惹かれます。
小山さんのピアノとオーケストラの会話を傾聴する時間ですね。
ベートーヴェンさんの曲は生身の声で呟いたり、呻いたりしているようで、
ショパンさんの「歌う」ような味わいとは異なっているように思います。

アンコールの2曲もベートーヴェンさんの曲だったのですね。
会場の方が「『エリーゼ』ってこういう曲なんだ。ゼンゼン違うね!」と語られたという
「エリーゼのために」と、ピアノ・ソナタ「悲愴」の編曲というサプライズだったのですね。
2曲とも、ベートーヴェンさんの曲の中では歌の要素が強く、
人間臭い愛すべき人が懸命に歌っているようで、よけいに胸を打つような印象を抱いています。

本日3月21日は、田村宏先生の門下生の皆さまの演奏会という特別な日だったのですね。
20日にオーケストラで演奏された「運命」。
田村先生が夢見られたという「2台ピアノ6手の『運命』」が
小山さん、門下生の皆さまによって奏でられ、実現されたのですね。
次は東京文化会館へワープさせていただくこと、心待ちにしております。
素晴らしいお知らせを有り難うございました。
Date: 2016/03/21/22:58:55 No.4520

Re:小山さんのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番に聴き惚れました。
とさま
ぴあのふぉるて様
まじょるか魔女様
皆様へ

小山さんへの敬愛の念に充ちたぴあのふぉるてさんの投稿を拝読し、とても嬉しくなりました。また、まじょるか魔女さんのリプライで言及された曲への想いに感銘を受けました。

交響曲第5番「運命」と第6番「田園」とが対照的な作品であるように、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」と第4番のコンチェルトも対照的な作品ですね。全然性格が違うのに、どちらも紛れもないベートーヴェンらしい素晴らしい音楽になっているのが凄いですよね。

■■ぴあのふぉるてさんは、第4協奏曲の魅力の全てを実に的確に指摘されていらっしゃいますね!

■【ピアノとオーケストラとの掛け合いが素敵ですね。小山さんと皆様で一緒に歩んでいく一体感にわくわくします。第2楽章は弦楽器とピアノの対話が心に沁みます。】(ぴあのふぉるてさん)・・・そうです、この曲の魅力は「対話」にありますよね。ぴあのふぉるてさんが書かれているように、ピアノとオーケストラとの「対話」は第2楽章に顕著ですね。まじょるか魔女さんも【ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番の第2楽章にとても惹かれます。小山さんのピアノとオーケストラの会話を傾聴する時間ですね。】と言及して下さっていますね。

ピアノとオーケストラとの「対話(掛け合い)」は第1楽章でも第3楽章でもこの曲の特徴になっていますよね。分かりやすい例で言えば、第1楽章の冒頭のピアノとオーケストラとの対話がありますね。

冒頭5小節のピアノソロを受けて、オーケストラ(弦楽器)が運命動機の第1主題を引き継ぎますよね。驚くべきことに、ベートーヴェンは、突然の転調(ロ長調!)を施すのです。この見事な転調によって、同じ主題なのに、別の世界(天国)からの声を聞くかのように響くのです。その結果、ピアノとオーケストラが「対話」しているように聴こえるのだと思います。ベートーヴェンの凄いところは、直ぐに、ト長調に再転調させて、聴き手を主調の世界に誘い、一切の不自然感を取り除いていることなのですね。

■【そして、何といっても、曲全体を通してピアノの音色が多彩で美しいことといったら! 滑らかな音階、愛らしいトリル、心を打つ左手のメロディ、決然とした和音…いろいろ全部、ピアノという楽器の魅力満載ですね。聴き惚れました。】(ぴあのふぉるてさん)・・・第4協奏曲のもう一つの特徴(=魅力)をずばり指摘して下さいましたね。そうです、これこそ、どちらかというと和声に軸足を置いた「皇帝」とは異なる第4協奏曲の魅力に他ならないと思います。

第4協奏曲の両端楽章は、ともかくピアノが縦横無尽に活躍し、分厚い和音群よりは、単音のスケールやアルペジオ、トリルが駆使されますね。非常にピアニスティックに書かれていて、ピアノとオーケストラが同時に対話をしたり、合いの手を入れるような対話だったり・・・【いろいろ全部、ピアノという楽器の魅力満載ですね。聴き惚れました。】(ぴあのふぉるてさん)・・誰もが聴き惚れちゃいますよね。ましてや小山さんの演奏だったら!

■【ベートーヴェンさんの曲は生身の声で呟いたり、呻いたりしているようで、ショパンさんの「歌う」ような味わいとは異なっているように思います。】(まじょるか魔女さん)・・・素晴らしい!2人の偉大な作曲家の違い(の一側面)を見事に表現しているように思います。

まじょるか魔女さんのお言葉から、ベートーヴェンの第9交響曲の最終楽章冒頭のレチタティーボ形式での対話を想い出しました。先行する3つの楽章の旋律が回想され、そのたびに、低音弦楽器が「それではない」と否定し、そして、歓喜の主題が断片的に登場すると、「そうそう それだ」のような「生身の声」での対話です。ピアノ協奏曲第4番の第2楽章も、ある種のレチタティーボで、実にベートーヴェンらしいですね。遠く、第9交響曲にも繋がるための一つの道程だったようにも思います。

■【小山さんの演奏で左手が歌うとき、いつもハッと息を飲みます。想いのこもった低音の美しいメロディに心を打たれます。】(ぴあのふぉるてさん)・・・これは小山さんの奏楽の魅力の一つですよね。

マスタークラスの時のお話(ご紹介下さり、有難うございます)を拝読し、ハッとしました。【「右トリルもいいですけど、左手を綺麗に…」(小山さん)と。】第4協奏曲の第1楽章で多用される右手トリル(多くは二重トリル)・・遠く未来に深化した形で現れる後期のピアノソナタ群を想起させるかのような、小山さんの素晴らしい奏楽を思い起こしています。

そして、小山さんの素晴らしい演奏を聴かせていただいたことにより、「ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番は、後期の作品群が産まれるために必要だった、記念碑的な作品の一つである」という想いを深めました。

とさま


Date: 2016/03/23/02:58:27 No.4521


▲Top

全ての音符に魂を込められる小山さん:Beethoven ピアノ協奏曲第4番
とさま
2016 都民芸術フェスティバル オーケストラシリーズ No.47 小山さんが演奏されたベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番のご報告です(3月20日 東京芸術劇場)。

ロマン・ロランが「傑作の森」と呼んだ中期のベートーヴェンは、まるで何かに取り憑かれたかのように、次から次へと不滅の名作を産み出しました。作曲者が命名した訳ではないのですが、例えば、「クロイツエル」、「ワルトシュタイン」、「英雄」、「熱情」、「ラズモフスキー」、「運命」、「田園」、「皇帝」・・・と各ジャンルを代表する傑作がずらりと並びます。

【「自然な音楽の発露」と「革新的形式」の奇跡的融合】
今宵の演目のピアノ協奏曲第4番ト長調作品58にはニックネームがありません。同じ時期に作曲された、やはりニックネームのない交響曲第4番変ロ長調作品60やヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61と音楽の方向性を一にする、自然に音楽が発露するような、際立った抒情性を特徴とし、温かく伸びやかな旋律や漲(みなぎ)る生命力に魅了される作品です。しかしながら、その一方で、ピアノ協奏曲第4番は革命的と言っても過言ではない、新しい創意工夫が凝らされた作品でもあります。

「自然な音楽の発露」と「創意工夫に充ちた革新的形式」とは、本来、相反する要素ですので、これらを音楽的に融合させるのは至難の業でしょう。小山さんは、第4協奏曲の演奏において、2つの要素の奇跡的融合を果たし、最高峰に位する名演を歴史に刻まれました。

生前シューベルトがこの作品を聴いたかどうか定かではないのですが、「全てが音楽」のシューベルトの作品に繋がるような、第4協奏曲・・・小山さんの演奏も「全てが音楽」、多用されるスケールやアルペジオあるいはトリルでさえ、真に音楽的に奏でられます。ここでは、第1楽章(冒頭、カデンツァ、結尾)での小山さんの演奏について、ご報告します。

【第1楽章冒頭の卓越した小山さんの奏楽】
ピアノ独奏で始まる冒頭5小節に込められたベートーヴェンの想いは小山さんの卓越した奏楽で聴衆の心に沁み渡りました。運命の動機に続くシンコペーションの和音の温かい響き、早い音階上行を伴って感動的な付点d音に達し、それに導かれるかのように、小山さんは、半休止の和音をこれ以上ないほど愛おしく奏でられました。この冒頭5小節に含まれる細分化されたモチーフが、リズム動機として縦横無尽に使われるという点で、「皇帝」に繋がる曲とも考えられます。本当に素晴らしく独創的な開始ですね。

【第1楽章カデンツァでの見事な小山さんの奏楽】
ベートーヴェンの2種あるカデンツァの内、小山さんは100小節に及ぶ長い方のカデンツァを選ばれました。小山さんの奏楽により、このカデンツァの高貴な佇まい、気高い精神性が如何なく表現され、感動的でした。しかし、同時に小山さんの生命力溢れるピアニスティックな奏楽に聴衆は圧倒的充実感を味わったのです。

【第1楽章結尾における小山さんの感動的な奏楽】
カデンツァ終了後に用意された神々しい24小節・・・≪小山さんの入魂の演奏・・・ここに極まる≫と言っても過言ではないほど、魂を揺さぶられました。

カデンツァのトリルを引き継ぎ、第2主題のリズム動機を使った美しい旋律がdolceで歌われ、左手三連符を刻む中、右手は4つの16分音符をグループ化し、それが6連符、11(5.5)連符、7連符と細分化され、やがて上行音型を経て最高音のハ音に達し、最後には同じように上行していきながら、ド・ファ・ソと主音に達し、ピアノはespressivoで運命の動機を感動的に歌うのです。そして、オーケストラが運命動機を奏する間、ピアノは細かい煌めくようなパッセージを展開し、次第に高揚して終結します。「音に込められたベートーヴェンの想い」は小山さんの真に卓越した奏楽を通じて全ての聴き手に届けられたのです。

■全ての音符に魂を込められる小山さん■
全てが素晴らしい小山さんの演奏(あるいはベートーヴェンの4番の音楽)について、部分の素晴らしさを語るのは意味のないことでもあります。しかし、「皇帝」ほどではないにしても、第4協奏曲の演奏は巷に溢れています。そして、上記の部分に耳を澄ますと、技術はあっても魂の躍動を感ずることの出来ない演奏、あるいは機械的な演奏に終始しているピアニストが多いことに気付き、愕然とします。小山さんは、素晴らしい技術をベースに、全ての音符に魂を込めて演奏なさいます・・・私達が小山さんの演奏に感動するのは、まさに小山さんの「全てが音楽」という尊い姿勢にあるのでしょう。

明るい未来を感じさせる、魂の躍動の極みのような第3楽章における小山さんの奏楽の素晴らしさ、随所における格調高く表現される左手パートの見事さ、音楽を聴く歓びに打ち震えました。感動的な終結に、拍手は鳴り止まず、小山さんは心を込めて「エリーゼのために」を弾いて下さいました。

小山さんの奏楽の見事さは、全ての聴き手に【何て素晴らしい音楽だろう!ベートーヴェンの音楽は本当に素晴らしい!「皇帝」も大好きだけれど、小山さんの演奏を聴いて、第4番も大好きになった。】という感動をもたらすことに如実に表れていますね。

下野さん率いる読売日本交響楽団の秀逸な音楽的協働も相俟って、第4協奏曲のもう一つの魅力である、ピアノとオーケストラとの融合美を心の底から満喫できた夕べでした。

〜〜〜〜〜〜〜
★小山さんへ:第4協奏曲の最高の演奏・・・これを越える演奏は小山さんにしていただくしかないです。第5協奏曲が産れるためには、第4協奏曲が必要だったこともよく分かりました。いつの日か、2つのコンチェルトを同時に聴きたいです(笑)。有難うございました。

★下野さんへ:充実した演奏に感謝しています。後半の第5交響曲の輝かしいフィナーレ、下野さんの取られた雄大なテンポ・・・最高でした。これほど感動的で説得力のある第4楽章の提示部の繰返しは、後にも先にもありませんでした。見事の一言に尽きます。
Date: 2016/03/21/02:05:55 No.4518


▲Top

【がんばろう!日本 スーパーオーケストラ 毎日希望奨学金チャリティーコンサート】での小山さん
とさま
昨日(3月15日)サントリーホール・大ホールで開催された【がんばろう!日本 スーパーオーケストラ 毎日希望奨学金チャリティーコンサート】のご報告です。主催した毎日新聞社は、保護者を亡くし震災遺児となった生徒や学生の進学、学業継続を支援する「毎日希望奨学金」を創設し、これまでに、延べ1000人を上回る遺児に数億円を給付してきたとのことです。

このコンサートは、毎日希望奨学金のためのチャリティー公演で、震災後6回目を迎えたとのことです。コンサートの趣旨に賛同して下さった、福島県出身の指揮者・本名徹次さん、小山さん、ヴァイオリニストの松田理奈さん、そしてこの日のために、手弁当で駆け付けて下さった大勢の奏者から成る夢のオーケストラ・・・読響コンサートマスターの小森谷巧さんを筆頭に、N響、読響、都響、東フィル、日フィル、東京シティフィル、山形響、紀尾井シンフォニエッタ、兵庫PAC管、広島響、群馬響、札響、イルミナートフィル、中部フィル、ベトナム響・・・から総勢89名!

プログラムは3部構成。
第1部 小山さんのピアノ 本名徹次さんの指揮
ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第2番ハ短調作品18
アンコール スクリヤービン 左手のためのノクターン

第2部 松田理奈さんのヴァイオリン 本名さんの指揮
オーレ・ブル/スヴェンセン編曲 セーテルの娘の日曜日
プッチーニ 歌劇【ジャンニ・スキッキ】より私のお父さん(ヴァイオリン編曲)
サラサーテ ツィゴイネルワイゼン

第3部 本名徹次さんの指揮
ラヴェル ボレロ

〜〜〜〜〜〜〜
小山さんは、3月10日の一関、11日の釜石での小学校、12日の陸前高田での公演を終えて、このチャリティコンサートに臨まれたのですね。子供たちの心に寄り添い、前向きに、一歩足を踏み出してもらいたい、と願って訪問された一連の被災地での公演、それとは趣旨が異なる今回のチャリティーコンサート・・・尊い小山さんの活動の一環に接し、感謝の念に耐えません。

「英雄ポロネーズ」と同じように、小山さんのラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、こうした機会に演奏するのに相応しい曲だとつくづく思いました。被災地では「がんばろう!日本」の「がんばろう!」に違和感を抱く人もいるかもしれません。これ以上 頑張れない人に想いを馳せたとき、「がんばろう!」を別の意味に翻訳したいと思います。それは、「一緒に歩む、前に一歩進める、未来に希望を持つ、無関心でない、忘れない、共感する、ずっと気持ちに寄り添う」ことであり、そういう気持ちが「がんばろう!」に込められているのでしょう。小山さんの「英雄ポロネーズ」やラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」の演奏には、まさにそういう小山さんの尊い気持ちが曲全編に満ち溢れていると感じられたのです。

今宵のラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」・・・第1楽章の全てが圧巻でしたが、第2楽章での小山さんは、殊の外 胸に染み入る美しい奏楽をなさいました。ラフマニノフが書いた最良のページとも言われる、第2楽章の最後の2ページ、すなわちコーダの15小節では、小山さんはいつもにも増して万感の想いを込めて演奏されました。左手の5連符の上下行形を伴奏にして、2拍ずつのレガート付の4分音符の和音を、小山さんは最強音で弾かれるのです。熱き想いと未来の希望をその和音群に託し、そして結尾の3小節はピアノだけが、憧れに充ちた心の情景を回想するかのように、魂の籠ったテヌート付の音を経て、最後の1小節のアルペジオに達するのです。アルペジオの各音の音価がこれ以上ないほど絶妙に区分され、最後のソの音に小山さんは万感の想いを込めて魂を注入されたのです。

各地で常に絶賛の嵐を呼び起こす小山さん奏する第3楽章・・・やはり壮絶な演奏でした。

今回、第3楽章の第2主題・・・あの有名な、誰もが一度は聴いたことがあると思わせる美しい第2主題が際立って感動的でした。最初はオーケストラのヴィオラが浪々とその旋律を歌います。それを受けて、ピアノがその旋律を復唱します。そのロマンティックな旋律に、誰もがとろけてしまいます。しかし、小山さんは、感傷的に旋律を崩して歌うのではなく、潔く、引き締まったフォルテで心を込めて歌われます。この主題は28小節続きますが、クライマックスのffに向けて、途中に音の強弱のメリハリはあるものの、全体としては長いクレッシェンドで弧を描くようにして感動的なクライマックスに到達するのです。極端なpを駆使し、音を揺らすなど、感傷的になり、結果的に感動を削いでしまう残念な演奏が多い中、見事なアーティキュレーションに支えられた、真に感動的な第2主題の小山さんによる奏楽に涙しました。

そうして、いよいよこの曲の最大のクライマックスです。いつ、どこでも、小山さんは最高にエキサイトした、燦然と輝く技巧を駆使して、明るい未来が約束されたかのようなエンディングで聴衆を熱狂させますね。今回も、第3楽章のピアノのカデンツア風の激しい音型で最高音に達し、一瞬の休止符を挟んで、オーケストラと合わせてピアノの最低音のハ音が打鍵される瞬間に息を呑みました。ハ長調でオーケストラが第2主題を高らかに歌い上げ、一方、ピアノは分厚い和音で第1主題を最強音で叩きつけ、やがて、気分を一新させて、いよいよPiu vivoに突入し、断固たる和音連打の中で、ラフマニノフらしい圧倒的終結を迎えるわけですね。腰を少し浮かせてまでも、物理的に、これほど強い音を求められた小山さんの想い・・・前向きに一歩踏み出すのに必要だったのだ、と深く感じ入りました。

鳴り止まぬ拍手に応えて、小山さんは曲名を告げられて、スクリヤービンの左手のためのノクターン(小山さんが大切にされている曲ですね)をアンコールで演奏して下さいました。満席のサントリーホール・・・針一本落ちても分かるほど完全な静寂の中で、小山さんの左手からの美しい調べがホールを充たし、弱音主体の曲でありながら、明るい未来と希望を感じさせるような、奇蹟の音楽と化したのでした。

第2部の松田さんの優しく温かいヴァイオリンの音色に聴衆は陶酔しました。

第3部のボレロを聴きながら、昨夏、小山さんが企画された、仙台での「子供の夢ひろば ボレロ」を想い出しました。オスティナート風に同じボレロリズムが永遠と繰り返され、少しずつ楽器を増やし、音量もどんどん増大し、最後の2小節で雪崩れ込むようにして終わる迫力に会場は興奮のるつぼと化しました。最後の迫力は凄絶ですが、同じリズムと同じ旋律を繰り返して積み重ねていくところが、今宵のコンサートの趣旨に相応しいと感じて聴いていました。

〜〜〜〜〜〜〜〜
最後に、小山さんと松田さんも登場され、本名さんの指揮によるオーケストラの伴奏で、全員で「ふるさと」を3番まで歌いました。

今回のチャリティーコンサートを協力された「特定非営利活動法人クウォーター・グッド・オフィス」の理事長の四分一勝さんがプログラムに「私達NPOのモットーは次です」と書いて下さっていました。

 乾いた砂漠に水がしみ込むように
 他人の心に真心が伝わるように
 おごり高ぶらず、
 自分にできるチャリティを
 続けられるかぎり。

小山さんの尊い活動と重なるお言葉が胸に沁み入り、多くの方々への感謝の念が深まるばかりです。

★小山さんへ:尊いご活動に深く感謝しています。今宵も誠に有難うございました。
★本名さん、松田さん、スーパーオーケストラの皆様、素晴らしい演奏と音楽に接し、深く感動しました。有難うございました。

とさま@仙台
Date: 2016/03/16/03:50:57 No.4515

Re:【がんばろう!日本 スーパーオーケストラ 毎日希望奨学金チャリティーコンサート】での小山さん
ぴあのふぉるて
とさま様
小山さんご出演の演奏会の模様をいつも、敬愛の情あふれるご筆致で、つぶさにご報告いただき誠にありがとうございます。感動と感謝と、尊敬の念でいっぱいです。
とさまさんの丁寧な描写から小山さんの音楽が聴こえて、小山さんを尊崇する気持ちがますます深まります。

小山さん先週は被災地をめぐり、いくつもの演奏会を開かれて、肉体的にも精神的にも厳しい数日間だったことと思いますが、その直後に都内で大きなチャリティーコンサートに出演されたのですね。
ほんとに、小山さんはどれほど深くて強い想いを、持ち続けておられるのでしょう。考えるだけで涙があふれます。

ショパンの「英雄ポロネーズ」やラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」など、小山さんがお選びになる曲は、聴く人が元気になるような、力強さと明るい希望に満ちた作品が多いですね。
小山さんは本当に親身になって被災地の方々のお気持ちに寄り添っておられると思います。
そして、被災地の方々に限らず誰でもみんな、小山さんの音楽を聴けば、勇気と活力が心身にみなぎり、一歩前へ進もう!という気持ちになるのではないでしょうか。

プログラムから引用してご紹介いただいた、心に染み入るモットーは、小山さんのお言葉として受け取りました。

こうして小山さんの尊い活動を、毎回、速やかにファンサイトで伝えてくださるとさまさん、心より感謝しております。
お身体お大事に、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
Date: 2016/03/18/18:36:10 No.4516

Re:【がんばろう!日本 スーパーオーケストラ 毎日希望奨学金チャリティーコンサート】での小山さん
まじょるか魔女
とさまさん、岩手県一関での震災復興祈念演奏会と、サントリーホールでのチャリティー・コンサートについて、きめ細かくお伝えいただき本当に有難うございます。
covariantさん、ぴあのふぉるてさんが仰るように、自分が臨席する以上に 
小山さんの音楽が魂に響いてくるような思いです。

3月11日は岩手県釜石にある双葉小学校で、釜石小学校と双葉小学校の全校生徒へ
公演されたのですね。
facebook によると、
「双葉小学校は、小山さんが2011年5月に被災地公演で最初に訪れた場所です。
当時双葉小学校の校長先生だった紺野校長先生は、現在は釜石小学校の
校長先生をされています。
『5年前の、必ずまた来ます、という約束を小山さんが守ってくださり、
もう一度来てくださったのが本当にうれしいです』と話されていました。・・・」とのこと。

一関と陸前高田では「花は咲く」、釜石の小学校では「smile again」を合唱されたのですね。
そして、チャリティー・コンサートでは国内外から集結された臨時オーケストラの皆さまと共に
力強いラフマニノフ2番を演奏され、最後に「ふるさと」を合唱されたのですね。
小山さんの通られた道には思いのこもった色とりどりの花が咲き、
再び笑顔になる力をいただけますね。
小山さんの尊い活動について、このように共有させていただき感謝しています。

 乾いた砂漠に水がしみ込むように
 他人の心に真心が伝わるように

一歩ずつ、一緒に進んでいきたいですね。
Date: 2016/03/19/01:41:20 No.4517


▲Top

【祈り】と【未来の希望】を表現した小山さんの素晴らしいショパン奏楽@一関
とさま
仙台のとさまです。

★ぴあのふるて様:素晴らしいご感想に、当日の感動が蘇ってきて胸が一杯です。バルトーク論素晴らしいです。
★まじょるか魔女様:これまた素敵なリプライを嬉しく拝読しました。琴線という言葉を思っていらしたのですね。
★yukiya.sさん:いつも本質的な素晴らしいご感想を嬉しく拝読しています。音楽の流れに想いが同化していく・・・その通りですね。

皆様の素晴らしいご感想に蓋をして申し訳ないですが、後日リプライさせて下さい。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
昨日、3.10 岩手県一関市の一関文化センター大ホールで開催された【震災復興祈念「未来へ向かって」〜鎮魂の舞と希望の調べ】に同席させていただきました。そのご報告です。

2部構成のプログラム・・・第1部は、500年以上の伝統を持つと言われ、国の重要無形民俗文化財に指定された早池峰(大償)神楽、休憩を挟んだ、第2部では、ショパンの作品の中から、小山さんは「祈り」と「未来の希望」を感じさせる作品を選んで、心を込めて演奏して下さいました。

★第2部:ショパンの作品から★
ノクターン第20番嬰ハ短調(遺作)
ノクターン第2番変ホ長調作品9の2
ワルツ第6番変二長調 作品64の1
ワルツ第1番 変ホ長調 作品18「華麗なる大円舞曲」
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ作品22
ピアノ協奏曲第2番より第2楽章「ラルゲット」
ポロネーズ第6番変イ長調 作品53「英雄」

2つのノクターンの美しく静謐な調べは「祈り」の音楽として、聴き手の心の奥底まで染みこみます。2つのワルツは、表面的な明るさより、むしろ夢幻の寂しさを感じさせる曲ですが、小山さんのピアノの優しく温かい響きを通して、会場に「未来の希望」の光が差し込んだかのようでした。「アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ」は、その2つの要素が融合した曲に感じられました。アンダンテスピアナートの左手の流麗で柔らかいアルペジオ伴奏に乗って現れる旋律は「祈り」であり、時々に天国からの光が差し込むかのような、きらめきの下降パッセージでは、魂が浄化されていくかのようでした。途中挟まれるレシタティーヴォは優しく微笑む音楽。大ポロネーズは、壮麗なコーダに向かって一途に歩んでいく小山さんの奏楽が感動的でした。

「ラルゲット」は、再び「祈り」の音楽として響きます。ショパンの書いた最も美しいメロディーの一つが涙を誘います。途中訪れる激しい慟哭の音楽での小山さんの真に迫った奏楽に胸を深く打たれました。コーダは永遠の安息の音楽。最後の音は最弱音で打鍵されながら、その音は決して弱々しくはなく、意思のある音として、聴き手の心に染みわたります。

長い音楽的な静寂の時を経て、「肯定感」に満ち溢れた「英雄ポロネーズ」の演奏が始まります。予定調和的演奏とは最もかけ離れた、小山さんの「英雄ポロネーズ」。比較的速目のテンポで「未来へ向かって」音楽が前進していきます。小山さんは、「英雄ポロネーズ」を根源的な「肯定感」に充ちた、勁い(つよい=しなやかでかつ強い)音楽として位置付けていらっしゃるのではないか、と感じました。そのために必要な、やや速目のテンポの設定、それでも音が深く鳴りきり、迫力のあるコーダを小山さんは渾身の想いを込めて弾き切られました。天を仰がれた小山さんの優しい表情が更に深く感動を誘います。

3.11東日本大震災より5年の歳月が流れました。この未曽有の大災害により犠牲となられた全ての方々に対し哀悼の意を表させていただきます。また、依然として避難を余儀なくされるなど、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

5年前の5月初め、小山さんが避難所の小学校の体育館で聴かせてくださった「英雄ポロネーズ」の感動的な記憶が蘇り、身の置き所がなくなりました。巨大地震と津波の報に接して、無力感に苛(さいな)まれた心ある音楽家は大勢いらっしゃいました。小山さんも、震災のあまりに大きな悲劇を前に、ご自分に今何ができるのか、お悩みになられたと伺っています。音楽は、瓦礫や放射能を取り除くことはできないし、乾きや空腹を直接満たす手段とはならないのですが、全く別の仕方で私たちの命を育むのが音楽なのだ、と教えて下さったのが小山さんでした。小山さんの演奏から私たちが得たものは、勇気、根源的な肯定感でした。そして、私たちは本来、あらゆる立場を超えて共に生きることができるのだ、という震えるような予感でした。

小山さんは、終演後の短いインタビューで「ピアノが好きで、音楽が好きでやってきたのに、震災の時に、明日生きるのに音楽は何の役に立つのか、と思ったりもしたのですが、時が経つに連れて、音楽には、前向きに一歩足を踏み出す力があることに気付きました」という趣旨のお話をして下さいました。同時に、昨年末の小山さんの素晴らしいメッセージにも書かれていましたように「被災された方々への深い想いと未来を生きる子供達への想い」は「一生の想いとして続けて行かなければならないと思っています」と仰って下さいました。

3月11日には釜石市、3月12日には陸前高田市を訪問され、一関文化センターと同じプログラムで演奏なさるとのことです。【被災地の傷はまだまだ深いものですが、一歩ずつ乗り越えていかなければ・・・】とお考えになっていらっしゃる小山さん・・・深く尊敬申し上げます。

公演の最後に、一関合唱団の方々と舞をなさった方々が舞台に登場され、小山さんのピアノ伴奏で「花は咲く」を会場の聴衆も参加して歌いました。音楽の力に改めて感じ入ると共に、小山さんと同じ時代に生きて、小山さんの素晴らしいピアノを聴くことのできる幸せ・・・小山さんへの感謝の気持ちで胸が一杯です。

とさま
Date: 2016/03/11/01:56:56 No.4513

Re:【祈り】と【未来の希望】を表現した小山さんの素晴らしいショパン奏楽@一関
covariant
とさま様

東日本大震災5周年というこの日に、素晴らしいご報告、ご投稿をありがとうございます。
普段から恵まれていて能転気な(と自認している)小生も、テレビで政府主催の追悼式に「参加」しておりましたが、今日は仙台ご出身の小山さん(様)やとさま様は?と思い、このページを訪ねました。

小山さんも、スケジュール表では昨日の一関だけかもと思っていたのですが、続けて釜石や陸前高田にもいらっしゃるのですね。多忙な毎日を精力的に活動される様子が目に見えるようで、そのことだけでも皆さん励まされるのではないかと推察します。

一関での震災復興祈念催しの様子は、とさま様のご報告で自分が臨席する以上の経験を共有させていただけました。ありがとうございます。
これほど内容のあるご報告は、以前の小生の「蓋」などとは異なり、「身」です! いくつも重ねた重箱の身がたまたま一時的に最上段に来ているだけですから、お気になさる必要はないと存じます(微笑)。このファンサイトは中身の詰まった重箱構造なので、いつも上から最低でも2,3段目まで拝見するのが常であります。・・・ということを最近、学んでおります(笑)。

小生も、一昨年ようやく、仙台経由で秋田に出かけた際、友人ご親族の案内で、震災後手付かずに残された宮城県南部の海岸方面を拝見する機会を得ました。今後とも私どもも、被災された皆様と共に歩んでいきたいと願っております。
Date: 2016/03/11/17:01:38 No.4514


▲Top

「次代へ伝えたい名曲」小山さんのバルトーク初体験のご報告
ぴあのふぉるて
3月5日(土)、彩の国さいたま芸術劇場リサイタル・シリーズ「次代へ伝えたい名曲」
第6回:小山実稚恵さんピアノ・リサイタルを拝聴しました。
会場の「音楽ホール」は、ホワイエの桃色のカーペットが美しく、心が和みます。
ホール内部は木目が温かな、理想的なサイズの空間です。(座席数604)

菜の花色のドレスで登場された小山さんは、まず、シューベルトの《即興曲》を4曲、優しく強く、深い想いをこめて演奏されました。
続くバッハ《シャコンヌ》は、明るい鮮やかな音色がホールに響き渡りました。たいへん音響の良いホールです。

このリサイタルの選曲について、お知らせチラシに小山さんのお言葉が載っています。
本シリーズには「この半世紀のうちに作曲された作品を、プログラム中に一曲挟む」というルールがあったそうです。小山さんのプログラム作りの流れを嬉しく拝見しました。【…… 最終的に武満徹さん編曲の《ゴールデン・スランバー》に決定しました。ビートルズ原曲のとても小さな一曲ですが、何かが琴線に触れました。そして、もう一つの理由として、このさりげない《ゴールデン・スランバー》の響きがバルトークのソナタの後に合うと直感し、どうしてもこの2曲の組み合わせで弾いてみたくなったのです。…(略)… 初めて演奏するプログラムですので、私自身も「どのようになるのだろう?」とドキドキしながら、未知の世界の扉を開けたいと思っております。】(チラシより)

そして後半、リスト《愛の夢》の後、今回の目玉!小山さんのバルトークを初体験しました。
凄い! 小山さんは「脱力の極み」に登場されたスポーツ選手の皆様もきっとひれ伏すほどの、上質の筋肉と素晴らしい運動能力に恵まれていらっしゃる、と思います。だから延々続く和音の連打でも、フォルテッシモでも、手の交差でも、ありえない跳躍でも、何でも大丈夫。どんなに過酷な箇所であってもしっかり表現できて、手を傷めることもないのだと思います。
天国のバルトーク先生もお喜びのことでしょう。
「ぼーく の 曲を 選ん で 弾い て くれ て アリガ ト ありが と」

《ピアノ・ソナタSz.80, BB 88》
第一楽章は、鍵盤を打つような奏法に、まさに心を打たれます!
第二楽章は、気持ちが沈むような、星空を浮遊するような、美しい不思議な調べに引き込まれました。
そして第三楽章。民族舞曲調の主題が使われた激しい音楽を、エネルギー全開で演奏なさる小山さんは、さながらバルトークが憑依したシャーマン!? とても初めて披露なさる曲とは信じられない、見事な弾きっぷりでした。  しかも、こんなに難儀な曲でさえ、やっぱり楽しそうに、いとおしむように演奏なさる小山さんなのですから、改めて小山さんの地力に感じ入りました。  (先月、富山公演で初披露されたので、彩の国は、正しくは 2回目ですね…)

それから、熱烈な拍手の後、くだんの《ゴールデン・スランバー》へ滑らかにつながり、まるで催眠療法にかかったように自分の興奮が鎮まるのを感じました。たぶん皆様も…。
続くショパン《ラルゲット》の美しさと《英雄》の勇ましさは、もう言うまでもありません。
さて、お楽しみの第三部:アンコール曲は、ショパンのマズルカ作品67-4、シューベルトの《即興曲》作品90-3と90-2でした。なんと嬉しくありがたいことでしょう。小山さんのお優しさに涙しました。

小山さん、初めて演奏なさるプログラムでまた新しい世界の扉を開かれましたね。素晴らしい音楽をお聴かせいただき、本当にありがとうございました。
とさまさんを初めファン仲間の皆様、楽しいひとときをご一緒させていただきありがとうございました。小山さんのリサイタルを初めて聴いた友人からも嬉しい感想メールが届きました。
また近く皆様とお会いできる日を楽しみにしております。
Date: 2016/03/08/13:18:55 No.4511

Re:「次代へ伝えたい名曲」小山さんのバルトーク初体験のご報告
まじょるか魔女
彩の国さいたま芸術劇場での 小山さんの一期一会の演奏。
皆さまの敬愛あふれるレポートにご一緒に拝聴している心地になれました。
特に気になるのが、富山・さいたまで新登場の
≪バルトーク:ピアノソナタSz.80, BB 88≫から、≪ゴールデン・スランバー≫への流れです。
バルトークの曲は作品番号も無機質でクリスタルな響きで、皆さまの熱い描写から 
小山さんの弾力のこもった打鍵からはじける音のスパークが目に耳に浮かぶようです。
そして、ゴールデンスランバー。
yukiya.s さんによると「武満特有の繊細な音使いによる編曲で、原曲とは全く別個の作品」
なのですね。

Once there was a way
To get back homeward
Once there was a way
To get back home…
(家に帰る道が、昔はあったんだ
 自分の居場所に帰る道が、昔はあったんだけれども…)

この後の切ない
Golden slumbers fill your eyes
(黄金の眠りがおまえの瞳を満たす…)のメロディ。

小山さんの歌が聴こえてきます。
「帰りたいけれど帰れないところ」への思いが切々と伝わってきます。
「ゴールデンスランバー」という映画がありましたね。
とさまさんの地元仙台の東北大学卒業の井坂幸太郎さん原作で仙台でロケされていましたね。
打ち上げ花火に象徴される煌めくような青春時代に戻れない人たちの
ストーリーとも受け止められると感じました。

この2曲から「琴線」という言葉を思っていましたら、
ぴあのふぉるてさんが紹介してくださった「何かが琴線に触れました。」との
小山さんのお言葉を拝読しました。
バルトークでは琴線をかきならし、ゴールデンスランバーでは琴線を愛おしむように
つまびかれていらっしゃる 小山さんのお姿を想像しています。

covariant さんの「小山実稚恵さんは、そのたゆまぬ研鑽によって、ピアノを自己の身体として
表現できる。」との言及に息をのみました。
「心の琴線」と「ピアノの鍵盤 - ハンマー - 弦」が直結している音色だから、
小山さんの演奏を何回も拝聴したくなるのでしょうね。
素晴らしいご報告を有り難うございました。
Date: 2016/03/10/23:39:45 No.4512


▲Top

「次代へ伝えたい名曲」 第6回 3月5日 小山さんリサイタルの報告
とさま
素晴らしい書き込みを毎回 嬉しく拝読しています。

★covariantさん:【富山県教育文化会館におけるリサイタルのご報告】(No.4500) 2月26日の富山での小山さんのリサイタルの臨場感あふれる素晴らしいご報告を嬉しく拝読しました。力強いバルトーク、静かな涙を誘ったラルゲット、ホール丸ごとを共鳴させてしまった壮麗なシャコンヌ、楽器にまで≪いのち≫を吹き込まれてしまう小山さん、それが聴き手をより大きな感動に引き込むキーとなっていることの発見・・・そしてゴルトベルクのCDを待ち望むcovariantさん!私も同感です。富山公演のプログラムは、昨日の埼玉でのリサイタルと同一プログラムでしたので、事前に心の準備をして小山さんの演奏を拝聴できました。有難うございました。
★ぴあのふぉるてさん:【横須賀芸術劇場のプログラムがCDになるといいなぁ。】(No.4496) 2月20日の横須賀での小山さんの演奏に対するぴあのふぉるてさんの音楽に対する愛情と小山さんに対する尊敬に溢れる素敵なご感想を拝読して胸が一杯になります。天国にいらっしゃる大作曲家の呟き・・・本当に聴こえていたような気がします。大作曲家に祝福されたような音楽を創造される小山さんは輝いていらっしゃいましたね。シューベルトの各曲へのイメージもぴったりですね。気迫に充ちたシャコンヌ、ロマンたっぷりのリスト、小山さんのぶれない意思を感じさせる素晴らしい英雄ポロネーズ・・・どれも聴衆を魅了して止まなかった感動的な演奏でしたね。このプログラムでのCDも素敵ですね。有難うございます。
★実稚恵さまの微笑みさん:【テレビ放映のお知らせ】(No.4499)NHKの名曲アルバムのご紹介を有難うございます。私は、自宅にTVが無いため、拝見できないのですが、音楽仲間からお話(感想)を聞かせていただいています。セヴラックは舘野泉さんの素晴らしいアルバム(ひまわりの海:セヴラックピアノ作品集2枚組)を拝聴して、大好きな作曲家の一人になりました。組曲が多く、水・空気・光など自然の描写、色彩感豊かな表現、それでいてメランコリックな美しい旋律にも事を欠かない素敵な曲ばかりです。小山さんの演奏が光輝いていることでしょう。

〜〜〜〜〜〜
さて、彩の国さいたま芸術劇場・音楽ホールでの小山さんのリサイタルのご報告です(2016年3月5日)。

プログラムは、covariantさんがご報告(No.4500)された富山公演のそれと同じです。また、ぴあのふぉるてさんがご報告(No.4496)された横須賀公演のそれと大半が同じです。横須賀でのショパンのノクターン、ワルツとリストの一部が省略され、バルトークのピアノソナタとレノン=マッカートニー(武満徹編曲):ゴールデン・スランバーが新たに加わりました。

どの曲のどの演奏もホールが楽器化したかのように素晴らしく(covariantさんの感想と同じですね)、小山さんの演奏を聴かせていただく醍醐味の一つである「静寂の中に音の魂が注入される奇跡」を何度も味わう幸せに恵まれた公演でもありました。今回は、バルトークとシューベルトの即興曲、特に作品90の1を中心にして、ご報告させて下さい。

【バルトークのピアノソナタ】
優れたピアニストでもあったバルトークのピアノソナタは滅多に演奏されない難曲ですね。多様なリズムを内包し、密集和音による連打など、ピアノが打楽器であったことを改めて感じさせる曲ですが、同時に形式は強固で、ソナタとしての魅力に溢れた曲でもあります。ピアノで綴るロマンの旅(音の旅)シリーズの第5回で、小山さんはプロコフィエフの戦争ソナタ7番を取り上げられました。そのときの小山さんの凄演が蘇ってきたかのような、強烈なバルトーク演奏でした。プロコフィエフでは、冷徹・怜悧で金属的・無機的な楽想の表現に注力されたかのような小山さんでしたが、根底に何かヒューマンな感情の動きを察知させる演奏をなさり、驚嘆したことが昨日のように思い出されます。小山さんのバルトーク演奏の素晴らしさは、この曲の底知れぬエネルギーを完全に解放している点にあり、それはプロコフィエフ演奏と共通する本当に賞賛すべき点です。当然のことながら、バルトークのピアノソナタは、プロコフィエフとは全く異なる音楽であり、疾走する終楽章の激情、興奮も、決して破滅的な音楽ではなく、根底に生命感溢れる舞曲を想定した音楽であることを、小山さんは他の誰よりも見事に表現され、聴衆を圧倒しました。バルトークのピアノソナタとリストの舞曲的な性格の作品を並べて聴きたくなるような、示唆に富んだ素晴らしい演奏を堪能させていただきました。

【転調の魅力に満ち溢れた小山さんのシューベルト演奏】
今回は、曲間での拍手もなく、小山さんは、シューベルトの4曲の即興曲(作品142の2、作品90の1、作品90の4、作品142の3)を連続して演奏して下さいました。音楽以外には何もない、本当に至福の時間を過ごすことができました。

シューベルトの作品は転調の魅力に充ちていますね。多くの人を惹き付けて止まないシューベルトの転調・・・・グループからグループへの大きな転調だけではなく、シューベルトの場合には、わずか数小節の中で頻繁に転調を繰り返しますので、その魅力には抗しがたいものがありますね。転調前後のフレーズに小山さんは魂を注入されます。これ以上ない深い愛情と想いを込められます。恣意性やこれ見よがしの要素が皆無であり、シューベルトの想いに立脚した自然な音楽が美しく鳴り響き、聴衆に優しく語りかけて下さいました。

【作品90の1における小山さんの絶妙な表現】
■愛惜の情を持って冬の旅に同行される小山さん
「即興曲作品90の1 ハ短調」はバラードであり、また自由な変奏曲、そしてシューベルトの転調の魅力に彩られた名作ですね。楽譜の記号上ではハ短調ですが、冒頭いきなりフェルマータのついたト音の両手ユニゾンの強打で始まり、聴き手を凍りつけます。その後、右手だけの単音の付点音符を伴う主題は、まるで冬の旅の主人公が歩むかのような寂しい印象を与えます。この主題は、声部を増やしながら40小節まで発展して行きます。多くのピアニストが各フレーズの終わりでかなり大きなリタルダンドをかける誘惑に負ける中、小山さんは各フレーズの終わりに、絶妙のニュアンスで音符に魂を吹き込むことで、シューベルト音楽の核心に迫る感動的な奏楽をなさります。小山さんは、冬の旅の主人公に深い愛惜を注がれるかのように、長い同行の旅が始まります。

■転調の繋ぎの部分における絶妙なニュアンスによる小山さんの感動的な奏楽
41小節からは、左手の柔らかい三連音符の伴奏に乗り、件の主題を自由に拡張して美しく歌います。やがて三連音符が右手に移り、左手が主題を歌います。そして、小山さんの感動的な奏楽が71小節目から始まるのです。三連音符の伴奏音型が再び左手に移り、右手がオクターブユニゾンで主題を美しく歌い上げるわずか3小節での転調の美しさ・・・その末尾の右手オクターブ「ラ・ソ・ファ・ソ・ラ」の絶妙なニュアンス、それに続く新しいフレーズは、左手の和音群での伴奏に支えられて、二重唱のように互いに語り合うかのような、この世のものとは思えないほど美しい旋律として歌い上げられます。この転調の繋ぎの部分・・・実に多くのピアニストが、メカニカルに通り過ぎてしまいます。小山さんは「ラ・ソ・ファ・ソ・ラ」に万感の想いを込めて演奏なさいました(過去のどの会場でも、CD(3分47秒〜4分22秒)でも)。それがあって初めて、二重唱の旋律が感動的な音楽として必然性をもって響き、聴き手の心に染み入るのではないか、と感じ入った次第です。ピアニストがシューベルトの想いに共感し、心の底から音楽に寄り添わない限り、決して聴くことの出来ない音楽・・・小山さんという真の芸術家が紡ぐ音楽を聴ける歓びに打ち震える想いです。

■ベートーヴェンの運命のリズム動機に類似したフレーズ
作品90の1は、様々な調を彷徨う曲であり、ハ短調で居る時間はほとんどないと言っても過言でないかもしれません。曲の後半では、ベートーヴェンの交響曲第5番(運命)ハ短調の第1楽章の有名なリズム動機に類似したフレーズが現れます(拍は異なりますが)。小山さんは、ffで渾身の力を込めてその動機を奏楽され、シューベルトの想いを聴き手に伝えて下さいました。誠に感動的であり、ここでもホール全体が楽器化したかのようでした。

■エンディングにおける小山さんの素晴らしい奏楽
凍てつくような冬の旅も終わりに近づきます。途中、ふと長調に転調し、一瞬慰めさせてくれるような箇所もありましたが、運命のリズム動機に象徴されるように、旅人の厳しい運命は変えようがなく、彼(彼女)に想いを馳せるとやり切れなくなります。しかし、シューベルトは、終わりの12小節で旅人に安息の道を用意して下さいました。それは、聴き手のやるせなかった気持ちを平穏にしてもくれます。通奏低音のように不気味に連打される8分音符群が消滅し、pppで、どこからともなく冒頭の主題がぽっつりと呟くように現れます。調性が移ろい、ハ長調の平安を求めて、ゆっくりと確認しながら歩みを進めるかのようです。レガート・クレッシェンドと記譜された2つの4分音符の和音に導かれ、最後の2小節は、ハ長調の3つの和音で静かに終わりを告げます。このレガート・クレッシェンドでの2つ目の和音に込めた小山さんの想いは、旅人への深い愛情を感じさせるものでした。2つ目の和音を強く奏することで、旅人のために、永遠の安息の場所である天国への門の扉を開くのを助けるかのように。そして、最後の美しい和音は静寂の中に消えて行くのです。

小山さんのシューベルト演奏は、音符の全てに魂が注がれているので、楽譜を越えて、シューベルトの音楽を愛する全ての人の心に沁み入るのでしょうね。それは、シューベルトは「全て音楽」を意味していることに他ならないのではないでしょうか。シューベルトの即興曲作品90&142を収録した小山さんの最新のCDからも、最良のシューベルトの音楽を堪能することができます。人類の宝のような珠玉のCDですね。

〜〜〜〜〜〜
★小山さんへ:シューベルトの心理の襞の深さに迫った演奏を聴かせていただき感謝の言葉もありません。即興曲の素晴らしい演奏が少ない理由がよくわかりました。それは「シューベルトは全て音楽」だからですね。そして、それを実現できる真のピアニストは小山さん以外に巡り合えていなかったからです。これからも、ファンの皆様と小山さんのシューベルトを大切に聴き続けていきたいです。(もちろん、ショパン、リスト他の演奏も最高でした!)有難うございました。

とさま
Date: 2016/03/06/22:04:15 No.4508

Re:「次代へ伝えたい名曲」 第6回 3月5日 小山さんリサイタルの報告
covariant
とさま様

富山と同様のプログラムによる、彩の国さいたま芸術劇場でのリサイタルのご報告、とさま様ならではのご報告、ありがとうございます。とても参考になります。富山からの私の大雑把な拙文にも暖かいご評価をいただき、感謝申し上げます。

最近の私が、自分なりに今更発見し開眼したことは、音楽という芸術は、作曲者ではなくて演奏家こそが、真の芸術家なのだなあということです。作者が鑑賞者に直接働きかけられる絵画などとは違って、作曲者の魂は、演奏家によってはじめて鑑賞者に届けられるものですね。 その今の私には、とさまさんが上述されている「小山さんという真の芸術家が紡ぐ音楽」という表現が、とても快く響きました。「シューベルトは全て音楽」とおっしゃる意味も、そのように捉えることとほとんど同義なのかな?と思っております。
小山さんには、この芸術家としての道を更に深めていただきたいと存じますし、また、私どもはその音楽に浴する僥倖に感謝し、お互いに支えあっていきたいと願うものです。
Date: 2016/03/08/00:16:24 No.4510


▲Top

至福の時、そして次代へのメッセージ
yukiya.s
このひそやかな歌と語りに耳を傾け、おおらかで静かな時の流れに身を委ねる幸せ。ころこそ至福と言うにふさわしい。
3月5日の彩の国さいたま芸術劇場での小山実稚恵さんのリサイタルの冒頭のシューベルトの4曲の即興曲を聴いていて、そう感じた。作品142−2、90−1、90−4、142−3が続けて演奏され、その一曲一曲に息を飲む静寂の瞬間が何度も訪れた。静寂と言っても、無音の部分のことではなく、その奏楽が水を打ったような静けさを醸し出す静寂。語り口が静かなだけに、そこに宿る心情がひたひたと沁み込んできて、それこそ水のように余韻の環が胸に広がっていく。90−1や90−4では、クライマックスのあとの尾の引き方、繰り返しの際のニュアンスの変化など、絶妙なバランス感覚が発揮され、しかもそれが心の動きに自然に沿っていて、音楽の流れに想いが同化していく。
シューベルトの孤独に一心に寄り添いながらも、その音楽を奏で、その時の流れを味わうことを彼女自身が無上の幸福と感じているからだろうか、寂しさや孤独感よりも、シューベルトの素朴さやあたたかさが印象的だった。彼女の奏でるシューベルトは、微笑み‐しかしどこか寂しそうな‐を湛えていた。
後半のバルトークの『ソナタ』では一転、生命感のある音楽が弾力のあるピアニズムで奏でられる。意外なほどに潤いを感じた演奏で、緊張感を保ちながらもその流れはやはりおおらかだった。このソナタから詩情を感じたことはあまりなかったが、彼女の演奏によってこの作品の新たな魅力を知った。そしてその次には武満徹が編曲したジョン・レノンとポール・マッカートニーの『ゴールデン・スランバー』が演奏された。武満特有の繊細な音使いによる編曲で、原曲とは全く別個の作品と思えるが、バルトークの体がうずくような世界のあとで聴くと、静謐な時空間に入り込んだように感じられた。あたかも時の流れが遅くなったように幻想が満ちていき、音に導かれて彼方の世界に。
そのあと、ショパンの『ピアノ協奏曲第2番』の緩徐楽章が独奏版で演奏された。優しく真っ直ぐな演奏を聴いて、人への一途で純な曇りのない想いがこれほどストレートに感じされる曲もなかなかないとの思いを新たにした。
いつの時代も変わらない人の想いや愛の尊さ。このリサイタルは彩の国の「次代へ伝えたい名曲」の一環であったが、小山さんのおおらかな演奏によって、これらの名曲から彼女が次代へ伝えたいのだろうメッセージが聞えてきた。
Date: 2016/03/07/23:05:40 No.4509


▲Top
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [24] [25] [26] [27] [28] [29] [30] [31] [32][33] [34] [35] [36] [37] [38] [39] [40] [41] [42] [43] [44] [45] [46] [47] [48] [49] [50] [51] [52] [53] [54] [55] [56] [57] [58] [59] [60] [61] [62] [63] [64] [65] [66] [67] [68] [69] [70] [71] [72] [73] [74] [75] [76] [77] [78] [79] [80] [81] [82] [83] [84] [85] [86] [87] [88] [89] [90] [91] [92] [93] [94] [95] [96] [97] [98] [99] [100]

TOP Admin
 ★ Produce by Masato ★